「この世界の片隅に」の地続き

片渕監督のサイン会で、少しお話する機会をいただいたときのこと。
感謝の言葉とともに「今年、祖母が99歳で亡くなったのですが、その祖母にも観て欲しかった」と伝えたら「ああ、ちょうど径子さんくらいの年齢ですね」と監督が。

サイン会を終えて映画館を出て、そのあと歩きながらぼんやり反芻していたのですが…そういえば祖母と径子さん、共通点が多いのです。

祖母の戦中~戦後については、命からがら、知人同士で助け合って何とか満州から引き揚げて来た、ということだけ聞いてます。本人もあまり思い出したくない記憶であったろうから、自ら詳しく語ることはなかったし、父や私も敢えて何も聞いてこなかった。
そんな祖母は、戦後の混乱期で、若くして旦那さんに先立たれ、子供(長男)も亡くした。その境遇がふと、径子さんと重なりました。

多くのつらい出来事に見舞われて、泣いて、それでも径子さんと同じように「自分が選んだ道じゃけえね」と、耐えたのかもしれない。そしてその道の先に、今の父や私がいる。
多くの人たちと同じように、やはり私にとっても、この作品は「地続き」でした。